BAS の衛星論文を読んだ日、私は拡大率の違う一枚の衛星画像を長く見ていました。
2018 年、英国南極調査局(British Antarctic Survey, BAS)の研究チームは、衛星画像上に 11 か所の新しい皇帝ペンギン繁殖地を記しました。そこには誰も行ったことがありませんでした。人がほとんど入らない海氷の奥にある場所もあれば、強風の海峡の向こうでヘリコプターが行けない場所もありました。
それを見つけたのは、Sentinel-2 と Worldview-3 衛星が撮った画像と、その画像に写る、茶色とも褐色とも言い切れない斑点でした。
それはペンギンのフンです。白い氷の上に残った茶褐色で、700 キロ離れた衛星からでも識別できます。

ピクセルの中の茶色い地図
衛星が宇宙からペンギンを見つけるには、まずペンギンが残したものを見つける必要があります。ペンギンは衛星画像の中で手を挙げてくれません。でもフンは目立ちます。
皇帝ペンギンの繁殖期は南極の冬です。彼らは海氷上に集まり、数千羽、時には数万羽が同じ氷面に立ちます。二か月ほど水に入らず、卵を足の甲の上で交代で抱きます。時間がたつと、大量のフンが氷上に積もります。日射、凍結融解、圧縮を受けて、大きな茶褐色の斑点が残ります。
白い氷、茶色い斑点。衛星にとってはコントラストが高いです。この観察が、リモートセンシングの方法全体を可能にしました。
BAS の研究者 Peter Fretwell と Phil Trathan は、2009 年の Global Ecology and Biogeography 論文でこの方法を最初に提案しました。使ったのは Landsat-7 衛星で、解像度は約 30 メートルです。ペンギン群の輪郭は見つけられますが、規模を確認するのはまだ大変でした。
2018 年の Antarctic Science 論文では、Sentinel-2(解像度 10 メートル)と Worldview-3(解像度約 0.3 メートル)を使うようになりました。フン斑の境界がようやくはっきり切れ、自動分類アルゴリズムで候補をまとめて選び、そのあと現地確認へ回せるようになりました。
11 か所の新しい繁殖地は、こうして浮かび上がりました。そのうちいくつかは海氷地図の奥深くにあり、座標も名前もありませんでした。
食べ物が違えば、色も違う
衛星でフンを見分けられる理由には、重要な細部があります。食べたものによって色が変わるのです。
アデリーペンギン(Pygoscelis adeliae)の主食はクリルなので、フンはピンクがかります。クリルに含まれるアスタキサンチンが代謝後も色素として残るからです。皇帝ペンギン(Aptenodytes forsteri)は魚とイカを食べるので、フンは茶色から褐色寄りになり、アデリーとはかなり色調が違います。
この違いによって、衛星は二種のペンギンを区別できます。
衛星画像の色分類は、ピクセルのスペクトル反射率に依存します。食性によるフンの色の違いは、画像の中で異なるスペクトル特徴として現れます。研究者はその色を補助線にして、ほかの手がかりに頼らなくても、どの種のペンギンかを推定できます。
何を食べたか。何を残したか。どちらも衛星に記録されます。
この推論の鎖が、方法全体の土台です。
30 メートルから 0.3 メートルへ
Landsat 系列衛星の解像度は約 30 メートルで、1 ピクセルが小さな駐車場ほどの面積になります。この精度ならフン斑は探せますが、頭数を数えるのは難しいです。
Sentinel-2 はピクセルを 10 メートルまで縮め、斑点の境界がかなり見やすくなりました。Worldview-3 やほかの Maxar 商業衛星はさらに 0.3 メートルまで解像度を上げます。この段階になると、個体や小さな群れの輪郭が見え始めます。
三つの解像度はそれぞれ役割が違います。30 メートル級は南極全体のスクリーニングに使い、範囲は広いけれど粗い。10 メートル級は個体群の境界確認に使い、広さと細部のバランスを取ります。0.3 メートルは空撮に近い精度で、密度や個体数推定の検証に使いますが、カバー範囲が限られ、南極全体は掃けません。
三層を重ねて、ようやくピクセルから頭数へ進めます。それぞれの層が、自分の得意なことをしているんですね。

地図を見つけ、現場で照合する
衛星画像は出発点にすぎません。色斑を見つけるのは第一歩です。
研究者がフンらしき色斑の位置リストを得たあと、どうにか確認しなければなりません。南極の現地確認は高くつきますし、天候が許す短い窓の中でも到達できない繁殖地があります。BAS は、優先順位をつけてヘリコプターや固定翼機で低空飛行し、空撮で確認します。飛べない場所は、複数時点の衛星画像を比べ続けます。
2012 年の PLoS ONE 論文では、Fretwell と Trathan が衛星方法で世界の皇帝ペンギン個体数を約 595,000 羽、繁殖地を 46 か所と推定しました。
2018 年に 11 か所が加わり、繁殖地の総数は 54 か所に増えました。新しい繁殖地それぞれの個体数は、まだ評価中です。
2024 年、研究チームは Sentinel-2 と最新の Maxar 画像を使って、分布地図を更新しました。いくつかの古い繁殖地では、過去十年で周辺の海氷状況が明らかに変わっていました。フン斑が縮んだ場所もあり、完全に消えた場所もありました。
消えたからといって、ペンギンが全滅したとは限りません。群れが近くのより安定した氷へ移動し、衛星がまだ新しい場所を見つけていない可能性があります。
皇帝ペンギンと海氷の帳簿
皇帝ペンギンは現生ペンギンの中で、海氷への依存が最も強い種です。繁殖も採餌も、安定した氷面から離れられません。
アデリーペンギンやヒゲペンギンのように岩岸で繁殖することはできません。卵を抱く足場として、安定して厚い海氷が必要です。繁殖期の途中で海氷が早く割れると、地上の卵や防水羽毛のまだない雛は、そのまま海に落ちます。
近年の衛星モニタリングでは、一部の繁殖地周辺で海氷が覆う期間が短くなっています。この数字は保全評価に直接入っています。
BirdLife International は 2023 年、皇帝ペンギンの保全ランクを Vulnerable、危急に引き上げました。その評価の裏には、衛星画像と個体群推定が重要な根拠としてあります。
フンでペンギンを探すのは、よりよい選択肢がないからです。南極は広すぎ、冬の窓は短すぎ、直接歩いて見に行くのはぜいたくです。
衛星にできるのは、研究者がオフィスで南極全体をめくり、名前のない斑点を一つずつ印づけ、それが何なのかを確認する方法を考えられるようにすることです。

衛星はまだ動いていて、地図は完成していない
ESA の Sentinel-2 衛星はいまも定期的に南極海氷を走査しており、画像は数日ごとに更新されます。BAS の研究チームはこのデータを使い、既知の繁殖地の変化を監視し、新しい場所が出ていないかを調べ続けています。
54 か所の既知繁殖地は、最終回答ではありません。研究者自身もそう言っています。
雲で隠れやすい繁殖地もあります。極夜のあいだはそもそも使える光がない場所もあります。衛星でも見えません。もっと奥の海氷域や、もっと離れた場所には、まだ見つかっていないフン斑があるかもしれません。
ピクセルからお腹へ、30 メートルから 0.3 メートルへ。この観測の鎖は数年ごとに少しずつ近づいています。でも南極の海氷地図も同時に変わり、地上のペンギンもそれに合わせて動き、衛星が追いかけます。
いまの 54 か所がかなり完全に近いのか、それとも既知の一部にすぎないのか。私は次の画像群も見続けています。
よくある質問
衛星は本当に宇宙からペンギンを見つけますか。
多くの場合、個体ではなくフンの色斑を先に見つけます。大きな繁殖地は白い海氷上に茶色い斑点を残します。
2018 年の衛星研究は何を見つけましたか。
英国南極調査局は Sentinel-2 と Worldview-3 画像で 11 か所の新しい皇帝ペンギン繁殖地を示し、既知数は 54 か所になりました。
フンの色はなぜ種の識別に役立つのですか。
アデリーはクリルを食べるためフンがピンクがかり、皇帝は魚とイカを食べるため茶色寄りです。その差が衛星の光谱に出ます。